一過性の脱力、失神
一過性の脱力、失神
一過性脳虚血発作(TIA)とは、一時的な脳血流低下のため、脳梗塞と同様の神経症状(麻痺やろれつ不良・意識消失など)が生じ、通常24時間以内(多くは10分以内)に症状が改善する病態です。
本格的な脳梗塞の前兆と言われ、3か月以内に10~15%が脳梗塞を発症し、その半数が48時間以内に発症すると言われています。
そのため、TIAを疑う一過性の症状や意識消失がもしあったら、早期に治療を開始しなければなりません。
早期に治療を始めることで脳梗塞の発症リスクが著明に低下することが多数報告されています。
「一過性でよくなったから大丈夫。様子を見よう」
は危険です。
必ず脳神経医療機関を受診してください。
これは実際の患者さんの例です。
散歩中に友人からろれつが回っていないことを指摘されました。本人に自覚はなく、友人の話しでは1~2分で改善したようです。
病院受診時にも症状はまったくありませんでした。
MRIを撮影しましたが、脳梗塞は認めず、MRA(脳血管)を撮影したところ、脳の太い動脈の一部が87%も狭窄していることが判明しました。
症状が増悪する前に、早く適切な治療をしたことで、現在も症状なく生活できています。
意識消失は、一過性脳虚血発作以外でも起こります。
一時的な脳血流低下によって、脳の機能が全体的に低下することにより、一過性に意識消失を来すものを「失神」といいます。広い意味で、一時的に意識を失うものの自然に回復するものを「失神」と呼ぶこともあり、その中にはてんかんや脳震盪なども含まれます。
失神の原因には、①神経調節性失神②起立性低血圧③心原性失神などがあります。
失神=脳疾患と考えがちですが、失神で脳の病気が原因なのは10%程度と言われています。
怖い失神は心臓が原因の失神です。
危険な失神の代表は心疾患による失神で、不整脈によるものが第一に挙げられます。不整脈により、心臓から血液を送る量が減り、脳血流が少なくなり失神を起こします。そのほか心筋梗塞や大動脈解離・大動脈弁狭窄症でも失神を起こします。
心疾患による失神は適切に治療しないと生命にかかわることもあるため、迅速な対応が不可欠です。
意識消失の原因として最も多いものです。
自律神経失調の調節障害で脳への血流が低下し意識がなくなってしまうのです。
横なった状態や座っている状態から立ち上がる時に血圧が低下し、めまいやふらつきなどが起こることです。
立ち上がる際や立っている間に自律神経の失調で脳への血流が低下し、めまい、立ちくらみなどの症状が出現し、重症になると失神してしまいます。
このように意識消失の原因はさまざまです。
脳のMRIで異常がなかったから、大丈夫とは言えません。
採血や心電図などで心臓が原因でないか確認する必要があります。
必要であれば循環器内科へ紹介します。